いちばん重要なことは、GOがAP Iを支配しているかぎり、Iがコードを使って何をやろうが問題にならないことだ。 Iが頑張ってくれれば、アプリケーションの開発会社がうちにすり寄ってくるだけの話なのだからぼくに、ちょっと席をはずしてくれと言った。
この部屋にいるスタッフの中で、金の成る木はソスコドではなくてAPIであることを、わかっている人間が一人もいないことを祈った。 呼び戻されて部屋に入ると、「その線で行こうとは言った。
ただし、一つだけ呑めないことがある。 ローンの五百万ドルを全額、ロイヤリティの前払い金にすることはできない。
転換するのは三百万ドルだけで、あとの二百万ドルはロ−ンとして残したい」ここで一歩譲らないと、顔が立たないだろう。 ぼくは、知的所有権をRの担保からはずしたかったが、その戦いは後日にゆずるほうがいいと思った。
そうしましょう。 ぼくがそう答えると、顔がほころんだ。
ぼくはそのあとの二か月、なんとか調印までこぎつけ、資金が底をつかないうちに二百万ドルを手に入れるために全力をあげた。 細かい点を詰めるときになると、顔を見せないことが多かった。
ある日、うちの会社にやって来て、Kがみずから新開発表をおこなうから、大変な注目を集めるというような話をして、あわただしく帰っていった。 あとの交渉は部下にまかせた。
それからすんなり行ったわけではなく、ライセンス供与の条件をめぐっては探めに操めたが、しかしまあ、それはローンの条件と同じ程度の問題だった。 三月に調印をしたとき、資金はもう数週間分しか残っていなかった。

アモンクに帰るCを空港まで送っていったとき、「提携打ち切り」条項の話が出たこれは、契約を解消し、わが道を行く権利を双方が保有する条項であるCは出発のときに、別れ話を持ち出されるのは嫌なようだった。 搭乗口の一段高いところに立ち、兵士がライフルをかつぐように、バッグを肩にかけ、まるで勲章でもくれるように、にっこり笑って、ぼくの手を握った「まあ、そんなことはあり得ないGO のような小さなベンチャー企業を叩きつぶそうとしたら、I の評判に傷がつく絶対にそんなことはしない」「人間には二つの人生がある一つは自分が生きる人生であり、もう一つは他人が語る人生である」ハリウッドの映画会社は、華麗な幻影をつくりあげて、人びとに現実を忘れさせた。
しかし、シリコンバレーのエンジニアは、それよりもさらに巧妙な仕掛けを考えだした。 幻影を現実に変えてしまう方法を見つけたのだ。
新しいコンピューター製品で成功するコツは、すばらしい製品を作ることではなく、発売前に、それがすばらしいものだ。 と万人に思い込ませることである。
そうなるには、わけがあるコンピューター製品はすべて、絶望的なくらい相互依存の関係にあるテクノロジーのトーテムポルと言えばいいだろうか。 どの顔もかならず別の顔にどこかでつながっているアプリケーションの設計者は、オペレーティングシステムがなければアプリケーションを設計できず、オペレーティングシステムの設計者は、コンピューターのハ−ドがなければオペレーティングシステムを作りようがなく、コンピューターはチップがなければ動かず、チップは仕様書がなければプロトコルを決めることはできず、その仕様書を作るチームには、アプリケーションの設計者も参加するめぐりめぐる円環の線上にいる人は誰でも、信頼性と耐久性の高いプラットフォームを求めているそれを可能にする新技術にたえず注目している問題は、はるか前に、開発を決定しなければならないことだ。
なぜそうなるかといえば、ピュタビジネスの変化はあわただしく、待っていることは死につながるからだ。 このため、客観的な事実ではなく、約束と評判にもとづいて、資源を配分しなければならない完成しないうちから、開発業者の完成見取図の力だけで、海辺のリゾートマンションを売るようなものだろうか。

しかし、いちど土台を選べば、仕事は楽になる。 ゼロからスタートするより、ひとの作った土台を手直ししていくほうが楽に決まっているだから、何が次の主流になるのか、それを見抜けるかどうかが、勝負の分かれ目になるこのゲームに勝つのは、自分たちに賭けるよう多くの人たちを説得できる会社である。
それに成功すれば、支持者がほかのプラットフォームに心移りする前に、投資を続けて、製品を改善していけるからだ。 業界に通じている人なら、研究開発よりもPのほうが重要であることを知っている。
残念ながら、これは事実なのだ。 コンピュータービジネスでは、メッセージをきちんと伝えられるかどうかは、綱引きのようなものであるその相手は、人より早く情報をつかむことで生計を立て、ニュースに飢え、疑り深いが、同時にだまされやすい連中だ。
この連中の仕事はきわめて単純で、できるだけ早く叩きつけて書くことだった。 厄介な問題がひとつある、それは、出版物によって、リードタイムが違ってくることだ。
月刊誌と日刊紙では、ネタを仕入れてから活字にするまでの時間は当然変わってくる四か月も寝かしておく雑誌もあれば、数時間のうちに記事にしてしまう新聞もある。 これは、ジャングルの動物の生活に似ている食うほうも食われるほうも、水飲み場のような生存に欠かせないものは、排除しあうことなく、共用する手だてを考えなければならない。
マスコミの世界にも、明文化はされていないが、ジャングルの錠のように、共存のル−ルがある。 そこで、大変なニュースがあると思ってもらうために、綿密な計画が必要になる背景説明、昼食会、資料配布、電話会議などで徐々にムドを盛り上げていき、最高潮に達したときに「メインイベント」を打ち、マスコミが殺到するように仕組んでいく。
近く、重要な発表があるということを知らせ、発表の日取りを決めるしきたりとして、前もって内容を直接伝えておけば、あらゆる新聞雑誌がこちらの段取りを尊重してくれる。 それまでは、報道禁止であり、ニュースバリューを吹聴せずに、関係者全員に製品をじっくり説明する時間ができる。
ハイテク企業と契約するP会社は、そうした。 ル−ルに通じ、ルールを守ることはもちろん、禁を破ろうとうずうずしている記者にも注意しなければならない記者というのは、農場で働く移民労働者と同じぐらい頻繁に職場を変えるようなので、ブラックリストを作成し、たえず更新していくのは大変な仕事であるP会社はジャングルのガイドのようなものだ。
誰に食われそうか、誰を食えばいいかを教えてくれるP会社の人がさんざん苦労するのは、報道陣という人種は、群をなすと、動物ほど信頼ができないからである。 一九九O年の早春、GOの製品開発には暗雲がたれこめていた当初の予定では、最初の製品を三月末に出荷するはずだったが、何度も遅れが出て、秋までずれこみそうな気配になってきた。
その責任の一端はIにあった。 ステートファームと打ち合わせをするたびに、Iのエンジニアは、GOに新しい要求を突きつけてきたぼくが反対すると、ソースコードを手に入れて契約を打ち切る権利の行使をちらつかせることさえあった。
手を切るのはいっこうにかまわないが、それはIの助けでGOが成功してからの話だ。 資金の問題も相変わらず頭が痛かった。


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